欧州車、5万人リストラ EV失策で部品各社も生産過剰に 日経新聞
欧州の自動車産業が2024年に入り、少なくとも5万人の従業員を削減すると表明したことが分かった。見通しや推定も含めると10万人を超える。欧州連合(EU)による電気自動車(EV)の振興策を受けて工場の刷新に踏み切ったが、ドイツなど主要加盟国が支援を縮小したことでEV生産能力が過剰になった。部品大手にも影響は波及し、リストラ後の先行きも不透明だ。
フランスのフォルヴィアは全従業員の13%にあたる1万人の削減を検討する。独ZFはEV駆動システム部門で働く従業員を中心に最大1万4000人を、28年にかけて削減する。
EUの自動車産業の市場規模は1兆ユーロ(約161兆円)超で、域内国内総生産(GDP)の7%を占める。同3%の日本の車産業よりも依存度は高い。EUの車産業従事者は1300万人で、推定も含めた車各社の欧州での人員削減数はその1%弱に達する。
基幹の車産業が悪化した原因は、ちぐはぐな産業政策にある。EUは30年までにEVを新車販売の80%、35年には100%とする野心的な計画を掲げるが、具体的な振興策は加盟各国に委ねていた。EV購入補助金や減税で右肩上がりに販売が伸びたが、23年後半から補助金の停止・縮小が広がると一気に減速した。
ドイツの24年1〜10月のEV販売は32%減り、逆にエンジン車は7%増えた。欧州31カ国でも同期間、EV販売は2%減った。独自動車研究センターのディルク・ボルシュレーガー氏は「EVは車体価格だけでなく充電価格も高い。経済規模がエンジン車に近づくまで公的支援は不可欠だった」と指摘する。
VWは22年までの5年間で電動化やソフトウエアなどEV関連に300億ユーロを投じていた。25年から新型EV群を販売する独BMWは24年1〜9月の研究開発費が66億ユーロを超え、前年同期比で27%増えた。政府の旗振りのもとEV投資にかじを切ったが、足元の需要減退を受け、生産過剰があらわになった。