同氏は早い段階でウクライナにもっと軍事支援を提供するべきだったと述懐する。ロシアの「侵攻前に武器をもっと提供し、侵攻後はより高度な武器を使わせるべきだった」。

ロシア側に大きな打撃を与える武器を提供するかどうかについては、NATO内で「だいぶ議論があったが、重大な悪影響を引き起こす大きな懸念」があり、そうしなかった。

しかし、より早期にかつ高度な武器を提供していれば、「侵攻自体を防いだか、あるいはロシアがこれまでのような軍事上の成果をあげることはできなかったかもしれない」。

ロシア・プ―チン大統領はNATOが直接参戦すれば撃退すると宣言し、核兵器の使用をちらつかせた。NATOでは、何がロシアからの攻撃を開始させる「レッドライン」に当たるのかが議論された。しかし、レッドラインを超えないために「NATOがウクライナへの支援を止めるわけにはいかなかった」。

振り返ってみれば、「多くのレッドラインをNATOは超えてしまった」。プーチン大統領が核兵器を使って戦争をエスカレートさせたければ、「口実を作ってそうするだろう」。

これまでロシア側による核兵器の使用は実現していない。ストルテンベルグ氏はこれを一定の成果とみているようだ。

トランプ前大統領の一声

2018年、トランプ米大統領(当時)はNATOの欧州加盟国に軍事費を増大させるようハッパをかけた。当時、NATO加盟国でGDPの2%を国防費に割く国は4つのみ。現在までに23カ国に増えた。しかし、いざという時に危機に対応するには「2.5%か3%まで上げないと十分ではない」とストルテンベルグ氏は見る。

ウクライナ戦争当初からゼレンスキー大統領はNATOに対し、ロシア機による爆撃を避けるため上空に飛行禁止区域を設けてほしいと訴えてきた。この区域に敵が違反して侵入した場合に、NATOは撃退する役割を持つ。ストルテンベルグ氏は要請を拒否してきた。欧州の全面戦争の発生を防ぐためだ。