この結果は容易に納得できるものです。
自分だけ水着で数学のテストを受けるという、恥ずかしくて逃げだしたくなるような状況では、テストに集中しづらく、ベストな成績を残せるわけがないのです。
では衣服ではなく自分の体に対するネガティブなイメージを持っている場合は、どうなるでしょうか。
確かに私たちは、自分の体を恥ずかしく感じることがあります。
鏡を見るたびに、自分の体型にがっかりしている人は、そうでない人に比べて能力や成果に何らかの影響が出るのでしょうか。
また、学業以外の分野でも、このようなネガティブな影響は出るものなのでしょうか。
今回、カナダのトロント大学に所属するジュディス・ベック氏ら研究チームは、自分の体を恥ずかしいと感じることが運動課題にどのような影響をもたらすのか調査しました。
恥ずかしい体は運動のパフォーマンスを低下させる
ベック氏ら研究チームは、147名の参加者(女性100名、男性47名)を対象に、ある課題を与えました。
これは、画面上のターゲット表示にカーソルを合わせるようマウスを素早く操作するタスクです。
標準フェーズでは通常のマウス操作と同じく簡単ですが、適応フェーズでは、カーソルの動きが手の動きから90°回転した状況(例:手を前に動かすとカーソルは右に移動する)に変更しなければいけないため、参加者はその変更にどれだけ適応できるかが試されます。
この課題では、視覚運動適応(visuomotor adaptation)というものを調べています。これは視覚情報と運動制御のズレを修正する能力のことであり、ここから視覚的な環境変化に対する運動の学習能力や実行能力を測ることができます。