市によると、Jリーグ仕様にするには審判用更衣室設置などで約50億円かかるといわれ、FC大阪単独では実現困難だ。市はJリーグ仕様にはこだわらず、高校ラグビーでも使用できる新スタジアムの建設を優先。FC大阪には、期限を定めて改めて第2グラウンドの改装を求める方針だ。

市とFC大阪との新たな協定では、期限までに建設できない場合は「花園からの撤退」も盛り込まれ、期限は「2028年まで」とされた。この協定によって、FC大阪はかろうじて当面、第1グラウンドを使用できる見通しとなった。

FC大阪 写真:Getty Images

税金を投入するか、ホーム移転か

Jクラブがスタジアム所有者に撤退を求められるという過去にない事例を何とか乗り切ったFC大阪だが、前述の通り今度はJリーグ側がスタジアムに「NO」を投げかける事態となったわけだ。その原因を作ったのは出来もしないプランを提示し、花園を“私物化”した上、不備を追及されると今度は市に責任があるかのように誘導したFC大阪側にあるのではないだろうか。

FC大阪側は新スタジアム建設について「ラグビーの発展に寄与したい」と説明しているものの、当初の約束事だった「第2グラウンドの改装」という構想については否定的だ。FC大阪を運画管理者に指定した市側は“庇を貸して母屋を取られた”思いだろう。しかし、FC大阪の顧問を務める野田市長は怒りの持っていきようがなく、Jリーグに噛みついたというのが今回の図式だ。

J2クラブライセンスをクリアするスタジアム建設をする気も財力もないとあって、残された道は2つ。「税金を投入してスタジアムを建設する」か「FC大阪にホームタウン移転を促す」ことしかない。“ラグビーの発展に寄与”などといった理想を述べておきながら、結果的にはサッカーとラグビーの共存共栄が無理筋であることを明らかにしたからだ。