1982年以降近畿日本鉄道が所有し「近鉄花園ラグビー場」という名称で、その後2015年から、東大阪市を中心とした第3セクターによる管理運営がなされてきた花園ラグビー場。2019年に開催されたラグビーワールドカップを機に全面改装が行われたが、あくまでも「ラグビー専用スタジアム」だ。ジャパンラグビーリーグワン(ディビジョン2)の花園近鉄ライナーズも本拠地とし、何と言っても全国高校ラグビーの舞台でもある“ラグビーの聖地”である。

しかし2020年、FC大阪が、同スタジアムの第2グラウンドをJリーグ仕様に改修した上で東大阪市に寄付するという条件で、ラグビー団体を退け指定管理者に就く。思えばこれが全ての過ちの始まりだった。

サッカーはラグビーと同じく芝の上でするスポーツだが、そもそもサッカーでは芝長約15~23ミリとされているのに対し、ラグビーは約30~40ミリが理想とされている。花園ではラグビー開催時には39ミリに調整され、FC大阪が本拠地とすることが決定した際に芝の品種も擦り切れに強いものに変えたという。

グラウンドキーパーの苦労には頭が下がる思いだが、それでもサッカー開催による芝の傷みは激しく、シーズン後半には土が見える箇所もあった。そして年末に始まる高校ラグビーでは、ここを目指して青春の全てをなげうってきた高校生ラガーマンたちに、荒れた芝での試合を強いることになる。

一方のFC大阪は、第2グラウンドの改装を2021年末までに完成させる約束だった。しかしそれは“空手形”で、同年にはクラブ発足以来運営面全般を担ってきたFC大阪の父である疋田晴巳氏(当時代表取締役社長兼CEO)が急性劇症肝炎のため60歳で急逝。資金確保もままならず、新スタジアム建設計画は事実上破綻した。

東大阪市議会でも問題となり、市の幹部は「Jリーグ基準での新スタジアム建設には多額の費用がかかるが、FC大阪は『出せない』と言っている」と答弁。市として、Jリーグ仕様での建設は求めない考えも示した。