人間以外の動物でも第三者罰はみられるのか?
調査を行うにあたり研究者たちは「愛情」の存在に目をつけました。
これまでの研究や経験によって、人間に愛情を込めて育てられた動物は野生環境とはかなり異なる行動パターンを取ることが知られています。
そこで研究者たちはまず、ラットを2グループにわけて、一方のグループのラットに対しては何週間も毎日、徹底的な愛情のこもった取り扱い(EAH)で飼育することにしました。
研究では60代の男性飼育舎が離乳した後のラットを引き取り、まるで自分の愛するペットのように、1日15分間、週6~7回、ラットの世話をして遊ぶようにしました。
(※愛情を注ぐラットたちには名前も付けられました。)
すると数日以内にラットたちは飼育者が近づくと飼育者の手の周りに集まるようになり、やがて飼育舎の体の上や首の周りを自由に動き回るようになりました。
また愛情を注がれたラットたちは飼育者以外の人間に対しても親しみを示し、手の周りに集まるようになりました。
一方で、通常の飼育を行われていたラットたちは飼育者に近づこうとしませんでした。
またラットを高い橋を渡らせるテストを行わせたところ、通常の飼育を行ったラットは怖がって人間のいる方に来ませんでしたが、愛情を注がれたラットは「おいで!」または「リック!」とラットの名前を呼ぶと、恐怖を振り払い人間の元までたどり着くことができました。
これは愛情を注ぐことでラットの行動パターンが大きく変化した一例と言えます。
愛情の効果を確認した研究者たちは、次に第三者罰に関連するテストに移りました。
実験ではまず、上の図のようにラットと2匹のマウスが配置されました。
ICRマウスはBL6マウスよりも気が強くBL6マウスをしばしば死ぬまでイジメることが知られており、両者の間の敷居を撤去すると、ICRマウス(加害者マウス)はBL6マウス(被害者マウス)に対して攻撃を開始します。