COP29では途上国支援や脱炭素化の具体策について難航した交渉が行われ、最終的に「年間300億ドルの支援」で合意に至りました。しかし、トランプ元大統領の再選や米国の条約離脱の可能性が国際枠組みに大きな不安を与えています。また、大量排出産業の技術的・経済的課題や、未成熟なグリーン市場への政策対応が不十分であることも明らかになりました。今後、脱炭素化を進めるには市場経済の需要拡大と公平なコスト負担を伴う政策転換が求められます。
11月15日から22日まで、アゼルバイジャンのバクーで開催されたCOP29(国連気候変動枠組条約締約国会議)に参加してきた。
産業界を代表するミッションの一員として、特に日本鉄鋼産業のGX戦略の課題や日本の取り組みについて現地の様々なイベントに参加して発信するとともに、欧州・米国の産業関係者らと意見交換をし、また会場の随所で開かれていた産業関連のサイドイベントに参加してその動向をウォッチしてきたので、本稿ではその個人的な印象と所感を報告したい。
トランプ再選がCOP29に影を落とすまずCOP29に先立つ11月上旬、注目されていた米国の大統領選挙でトランプ元大統領が圧勝し、さらに議会も上下両院で共和党が制するという、いわゆるトリプルレッドが明らかになった。これで第二次トランプ政権の下、再び米国がパリ協定を離脱する蓋然性が高まった。
第一次トランプ政権では政権発足から約半年後の2017年6月1日にパリ協定から離脱を「宣言」したのだが、パリ協定の規定(発行から3年間は離脱通告できない)に従って発行日から3年経過した2019年11月を待って米国は正式に国連に離脱通告し、実際に離脱が確定したのはさらにその1年後の2020年11月4日であった。皮肉にもバイデン現大統領が勝利した選挙の翌日である。翌年2021年1月20日にバイデン政権が発足すると即座に米国のパリ協定への復帰が宣言されたため、実際に米国がパリ協定から公式に離脱していたのはわずか2か月間だったのである。