低迷するチームのサポーターが暴走し、ゴール裏に居座った上で「社長出せ!」などと叫び暴徒化するケースは“Jリーグあるある”の光景の1つともいえるが、こうした行為が今後は「犯罪」として扱われる可能性が高いのだ。


大分トリニータ 写真:Getty Images

カスハラ防止条例、2025年4月から施行

東京都は全国に先駆けて10月に「カスタマーハラスメント防止条例(カスハラ防止条例)」を制定し、2025年4月から施行される。カスハラといえば、小売業やサービス業などが思い浮かぶが、この条例は業種を限定しない画期的なもので、顧客と事業者がいれば起こり得る。全国にも波及すると予想されている。

サッカーに当てはめれば「顧客=サポーター」「事業者=ホームゲーム主催クラブ」となるわけだが、勝ち負けのあるスポーツ興行において、勝利を求めるサポーターが、負けが込むクラブの上層部に対し謝罪を求めることが「顧客が事業者に対して過剰な要求を行うこと」や「商品やサービス(サッカーに関すれば試合結果)に不当な言いがかりをつける悪質なクレーム」というカスハラの要件を満たす。

さらに、SNS上での選手攻撃を放置することは、労働契約法5条の「事業者が追う使用者(選手)への安全配慮義務」に違反するもので、クラブは選手を守る義務を負っている。

カスハラについては、暴行、傷害、脅迫、強要、名誉毀損、侮辱、業務妨害、不退去など多岐に渡り、刑法や軽犯罪法などで規制されているのだが、迷惑な言動や過度な要求に対する法的な規制は、東京都が制定したカスハラ防止条例まで存在しなかった。また労働法上でも、カスハラ防止条例以外に、防止策を義務付ける規定は存在しない。

従来の厚労省によるマニュアルでも、カスハラの判断基準や企業の取り組むべき具体的な対策方法、企業の取り組みのメリットなどを記載する一方、カスハラを禁止する規定はなく、法的な効力がないものにとどまり、結果、カスハラを放置することに繋がった経緯がある。