そんな超極細のスパゲッティを手ごねで作ることは不可能です。

そこでチームは「エレクトロスピニング(電界紡糸)」という技術を応用しました。

これは一言で説明すると、小麦粉と液体の混合物を超極細の筒状の中に入れ、それを電気の力を使って引っ張り出す方法です。

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a:小麦粉と溶液の混合物、b:電気で引っ張り出す、c:麺が飛んでいくプレート、出来上がったシート/ 超極細スパゲッティの作り方/ Credit: Beatrice Britton et al., Nanoscale Advances(2024)

具体的にはまず、デンプンを主成分とする小麦粉に、水ではなく「ギ酸」の溶液を混ぜて混合物を作ります。

これはギ酸を入れることでデンプンを形作る螺旋(らせん)構造をほぐすことができ、それによって細さを増すことが可能だからです(上図a)。

次に、この混合物を注射針のような容器の中に入れて、先端の超極細の筒から電気の力を使って中身を引っ張り出します(上図b)。

こうして直径372nmの超極細スパゲッティを作ることに成功しました。(1ナノメートルは100万分の1ミリメートル)

またギ酸は筒状から引っ張り出されて、空気中に晒されることで蒸発して消えます。

研究主任の一人であるアダム・クランシー(Adam Clancy)氏は「通常のスパゲッティを作るには小麦粉と水を混ぜたものを金属の穴に押し込みますが、私たちが行ったのは電気で引っ張るという違いこそあるものの、文字通りスパゲッティと同じ成分であることは確かです」と話しました。

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走査型顕微鏡で見たスパゲッティ/ Credit: UCL – Chemists create world’s thinnest spaghetti(2024)

ただし、このスパゲッティは食用にはまったく向いていません。

熱湯に入れると1秒も経たないうちに火が通り過ぎてしまうからです。

また1本1本は細すぎるあまり、目で見ることはできません。