この研究のもう一つの興味深い点は、HVが化学反応を効率化する「ナノリアクター」としての役割を果たすことです。

ナノサイズの孔は、反応物を濃縮し、触媒として化学反応を加速させる効果があります。

例えば、ゼオライトと呼ばれる鉱物は、このナノリアクターの特性を利用して工業的に重要な化学反応を効率化することができるのです。

このような自然界のプロセスは、工学的にも応用できる可能性があります。

特に、HVのような構造は、海水と河川水の塩分濃度の違いを利用した「ブルーエネルギー」と呼ばれるエネルギー回収システムに活用される可能性があります。

現在、二次元層状のナノ材料を用いた技術が進展していますが、HVの自己組織化プロセスは、より持続可能で効率的なエネルギー収集技術の開発に新たな道を開くかもしれません。

今回の研究により、蛇紋岩を母岩とするHVは、地球上や宇宙における生命の起源だけでなく、エネルギー変換や化学反応の効率化にも貢献する可能性があることが明らかになりました。

この発見は、地球化学と生命科学、さらには工学的応用の分野に新たな視点をもたらす重要な一歩となります。

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参考文献

理化学研究所研究成果(プレスリリース)
https://www.riken.jp/press/2024/20241003_1/#:~:text=

元論文

Osmotic energy conversion in serpentinite-hosted deep-sea hydrothermal vents
https://doi.org/10.1038/s41467-024-52332-3

ライター

鎌田信也: 大学院では海洋物理を専攻し、その後プラントの基本設計、熱流動解析等に携わってきました。自然科学から工業、医療関係まで広くアンテナを張って身近で役に立つ情報を発信していきます。

編集者

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。