今回の研究では、地球の地下深くにある蛇紋岩という鉱物に、非常に重要な役割を持つ自己組織化現象が発見されました。
この発見は、地球上での生命の起源やエネルギー変換に関わる重要なヒントを提供するものです。
具体的には、HVという鉱物の特殊な構造とエネルギー変換能力が、地球化学的な反応によって自然に形成されていることが明らかになりました。
このHVには、ナノサイズの孔が無数に存在し、これが選択的にイオンを輸送するための流路として機能しています。
この流路形成の背景には、化学反応と物理的プロセスが組み合わさった「反応拡散メカニズム」と呼ばれるものが関与しており、特にpHの変化による沈殿物の形成が重要な要素となっています。
このメカニズムによって、HV内部では周期的な構造が生まれ、それがさらに分子レベルでのエネルギー変換に寄与しているのです。
興味深いのは、この現象が生命の誕生に関連している可能性があることです。
実際、HVに見られるイオンの流路が地球上の生命の始まりに深く関与していたと考えられています。
熱水噴出孔は、生命が誕生する以前の太古の地球にも存在していたため、このような自己組織化によって、生命に必要な化学反応やエネルギー代謝が初期の地球環境で自然に発生した可能性が示されています。
研究者たちは、これらの熱水噴出孔が、地球上で最初の生命が誕生するための「天然の化学合成装置」として重要な役割を果たしていた可能性があると考えています。
このナノスケールの構造は、地球上だけでなく、他の惑星や衛星にも存在する可能性があることが分かってきました。
たとえば、土星の衛星エンケラドスでは、地下の熱水活動が続いていることが発見されています。
もしそこでもHVのような構造が形成されているならば、生命が存在する可能性が広がるかもしれません。