次に、地域での主体(L)としての地域住民の力は、①リーダーシップをもつ小集団の存在、②異なる世代の協力、③新しい来住者との交流などによって高められる。

異なる世代間の協力は、地方創生事業を長期化させるためにも重要な意味を持つ。異なる世代は地元の若者や中年や高齢者だけではなく、外部の人でも地域移住者でも構わない。なぜなら、地域移動の経験者は比較の視点を持ちやすいために、時として新しい観点がそこで生まれるからである。

地域移動の経験者

このような地域移動の経験者はいくつかの特性を持っている。その多くが、

一度は大都市生活の経験がある。 長期的なビジョンをもち、地域住民に具体策を示せる。 すべての人々がビジョンの賛同者にならないことも認識している。 人と人を結びつけるネットワークづくりの才能がある。 地域を情報発信源にする意欲をもつ。 自営業や定年後という立場で、比較的自由に時間がとれる。

地域移住者は、このような特性を持ちやすく、コミュニケーション力に恵まれる人もいるため、地方創生の「まちづくり」に貢献する場合も多い。

移動者層が地元で示す違和感がきっかけとして機能する

また移住者が地元で示す違和感が、元来の地域住民(local people)がもつ力を刺激することは確かである。

一般に地元の人も移住者もともに人間文化資本(human cultural capital)を持っているから、それぞれに固有の学力、能力、資力、資格、経歴、名声、家格などが総合的力を構築する素材になる。これらが合わさって(L)としての住民の意欲・力量となる。

リーダーシップは実行力と統率力の二本立て

もう一つのレベル(L)には、地域でのリーダーシップがあげられる。

住民の意欲・力量と不可分なリーダーシップをここで加えるのは、何らかの事業や業務をスムーズに行う際には、「実行力」(P、パフォーマンス)に富んだ個人もしくは小集団が必ず必要になるからである。同時にその事業や業務は単年度で終了しては地方創生につながらないから、「統率力」(M、メインテナンス)に優れた個人もしくは小集団の活動もまた求められる。