この結果から、毎日のカフェイン量が多いと、ADやMCIの進行を抑える可能性が示唆されました。
但し、カフェインがどれほどの効果を持つかは簡単に言い切れません。
参加者全体のカフェイン摂取量とBMI(ボディマス指数)などの体格データには有意な差がなく、また認知機能の低下が進んでいるADの段階に入るまでの進行スピードには、カフェイン摂取量による影響はほぼないことが確認されました。
また、この研究では特に「アポリポタンパク質E(APOE ε4)」という遺伝子の型や、年齢、性別、教育レベル、喫煙の有無といった因子が、カフェインと認知機能の関係にどう影響するかも調べています。
すると驚くべきことに、カフェインを控える人は、aMCIに進行するリスクが2.72倍も高くなるという関連が見つかりました。
このような分析によって、「カフェインが記憶や思考の健康を守る一助となるのではないか」という仮説が生まれています。
カフェインが認知証の原因物質「アミロイドβ」の蓄積を防止?
この研究では、ADやMCIの患者を対象に、コーヒーやお茶に含まれるカフェインが脳や記憶力にどんな影響を与えるのかを探っています。
ADの患者では、脳内のアミロイドβに関連する物質の量を測ると、カフェイン摂取がその物質に影響して脳の働きが変化する可能性が示唆されました。
このアミロイドβは、健康な人の脳内でも生成され、通常は分解・排出されますが、何らかの原因で脳内にアミロイドβが蓄積すると、毒性のある物質が脳に蓄積し、脳細胞が徐々に死滅して記憶力の低下が進む可能性が高まります(下図参照)。
この研究では、カフェイン摂取が脳内のアミロイドβの増減に関わっており、カフェインの摂取量が少ない人ほど記憶力の低下が進むことから、カフェインが記憶力や認知機能に対してプラスの効果を持つ可能性が示唆されています。