私たちの体の表面にも内部にも様々な微生物が住み着いていますが、それらのかなりの部分が空気中を漂っていた微生物が定着したものとなっています。
これらの微生物の中には、病原体のように病気を引き起こすものもありますが、その多くは無害であり、彼らが形成する縄張りは、病原菌や病原ウイルスが定着するのを防ぐのにも役立ちます。
たとえば消毒をし過ぎて常在菌を死滅させてしまうと、逆に病原菌が増えやすくなってしまうという事態も起こり得ます。
豊かな微生物が存在する場所で呼吸を行うと、生きて病原菌と戦ってくれる常在菌を補給することができ、健康の維持と増進に役立ちます。
またこれまでの研究により、微生物は取り込まれた器官に留まらず、移動できることも示されています。
つまり消化管の菌が肺に定着したり、逆に鼻や肺の菌が腸内細菌叢に紛れ込むことがあるのです。
腸内環境を整えるためにビフィズス菌などを摂取することは非常に有効ですが、もしかしたら自然環境にいる菌を鼻や肺に入れることも、同じくらいお腹の健康に重要となります。
実際、健康な人と慢性呼吸器疾患の人の鼻腔内微生物叢を比較したところ、健康な人たちの鼻には、植物やミツバチなどに関連する自然環境に由来する微生物が多く存在することが示されました。
また定期的に自然環境に赴く人美とは都市部だけに入る人々に比べて呼吸器系の健康状態が良好であることが知られています。
これまでこの現象は、都市部の汚れた空気を吸わない期間があるからだと考えられていましたが、空気微生物の存在を効力すると、自然環境において微生物を定期的に補給することが健康を維持しているとも解釈できます。
以上のことから、新鮮な空気を吸うことは、ビタミンやミネラル、その他未知の健康成分を取り入れるのに加えて、常在菌のバランスを整え多様な細菌構成を維持するのにも役立つと言えます。
そのため研究者たちは、潜水艦や宇宙ステーション、締め切られた都市部の部屋に代表される新鮮な空気が得られない環境は、人体の健康にとってマイナスの影響を与えることになると警告しています。