私たちは長い間、栄養はすべて食事から得るものだと考えてきましたし、健康を維持するためには「バランスの良い食事」が欠かせないと信じられてきました。

また空気についての研究の多くは、有害物質や汚染物に焦点を当ててきたため、「空気から栄養を得る」というアイデアそのものが、健康に関する議論から遠ざかっていました。

何千年もの間、さまざまな文明において「新鮮な空気」が健康に良いと言われ続けてきましたが、現在では気分転換や精神的健康を得るための手段としてのイメージが定着しており、空気から何らかの栄養学的あるいは薬学的な恩恵を得る手段とは見なされなくなっています。

しかし呼吸の持続性を考えれば、話しは違って見えてくるでしょう。

呼吸は食事と違い、生きている限り一瞬たりとも止めることができません。

私たちは1日におよそ9000リットルもの空気を吸い込んでおり、一生を通じてその量は約4億3800万リットルにも及びます。

食事のように1日3回のイベントではなく、呼吸は24時間365日続く活動なのです。

この絶え間ないプロセスが、空気中の微量な栄養素を少しずつ体内に取り込むことを可能にしています。

たとえ空気中の栄養素の濃度が極めて低くても、膨大な量の空気を吸い込むことで、最終的に体内に蓄積される量は無視できないレベルになるのです。

そこで今回、ニューカッスル大学の研究者たちは、過去に行われた研究結果を参考に、人間が空気からどのように、そしてどんな種類の栄養素を得ているかを調べることにしました。

ミネラルは鼻粘膜から吸収できる

鼻の主な役割は匂いを感じることですが、吸い込んだ空気を加温、加湿して肺細胞を傷つけないようにすることも同じくらい重要な役目です。

この役割を果たすため、鼻の奥の粘膜は複雑に折りたたまれており、その表面積は150平方センチメートルにも及んでいます。

また嗅上皮と呼ばれる匂いを検知する領域には1000万個の嗅覚ニューロンがが存在しており、その表面は特定の匂い分子と積極的に結合するほか、多様なイオンや金属、アミノ酸などの取り込み口を有しています。