その観点から私(金子)は「コミュニティのDLR理論」をまとめてみたのである。
5. 地方創生における経済学の視点
「まち、しごと」10年間の総括文書へのコメント、および「ひと、まち」を包摂する社会学の視点は以上の通りである。それを受けて、「まち、しごと」に関連する経済学の視点からまとめておこう。
長期停滞に陥った日本経済の回復に必要なものは内需である。しかし、地方の衰退はこの内需を減少させる。
内需停滞の原因は二つある。一つはフローの所得の伸び悩みである。これは、賃金統計をみれば明らかだが,地方の賃金が特に伸びていない。現在の賃金上昇は主に製造業大手とサービス産業で生じているが、地方ではその比率が低いのである。
貯蓄と消費二つ目には貯蓄の増大である。まずは最低消費が都市と農村では違っている。所得はもちろん東京に比べれば、地方が低い。たとえば北海道の一人当たりの平均賃金は東京の70%程度しかない(札幌を除けば全道で60%になる)。
問題は貯蓄率であるが、老後の不安が大きい程、貯蓄率は高くなる。老後の不安は全国的に等しく認められる。社会福祉予算の削減が毎年実行されているのだから、個人の立場では貯蓄を増やし消費を減らすより対抗手段はない。
日本の需要を増やすには、未来に向けて老後の不安を払拭しつつ、国民の安心感を増大させるしかない。
消費の落ち込みと輸出への期待一般に消費は需要の70%以上を占めている。これが長期に停滞すれば、他の需要項目への依存度は高まる。以前は公共投資がそれに該当したが、現在では財政危機なので、むしろ公共投資は縮小ぎみである。
そうするとそれらに代わるものとして、外国人の需要に応えるすなわち輸出への期待が高まる。ただここにも二つの問題がある。なぜなら、輸出力のある企業、価格が高くても売る自信のある企業ほど日本国内に安住せず、海外に進出しているからである。
価格競争力と為替相場の問題結果的に日本に残るのは価格競争力の高くない企業と部門だけになった。そうすると、外国為替の動向が重要になる。