北海道大学名誉教授 金子 勇 北海道大学名誉教授 濱田康行
※ 本稿の分担は次の通りである。1. 地方創生再論(濱田と金子)と2. 初代地方創生大臣・石破茂氏との出会い(濱田と金子)は、両名が議論しながらその骨子を書いた。3. 10年経過した「地方創生」および4. 「地方創生における社会学の視点」は金子が、5. 「地方創生における経済学の視点」は濱田が草稿をまとめた。最終的には金子が全体を統一して書き直し、それを両名がそれぞれの立場で再度精査して、両者が合意のうえで最終稿として発表したものである。
1. 地方創生再論
内政の要としての「地方創生」9月27日に投票日を迎える自民党総裁選では各候補がそれぞれの政策を訴えているが、私たちは特に「地方創生」を取り上げたい。なぜか。
① 日本の近未来にとって、内政では「地方創生」に集約される「まち、ひと、しごと」のテーマが筆頭課題であると考えられる。なぜなら資本主義のまま、あるいは「資本主義の終焉」の後だとしても、東京一極集中の反面としての「地方消滅」はありえないからである。
② 10年前の「増田レポート」以来、多くの小中都市や町村では近未来においての「消滅」が危惧されるようになったのに、6月に出た「地方創生」10年間の「総括文書」では有効な対応がなされなかったという反省が目立つものであった。
達成度が見えやすい地方創生③ 10年後の今日でも、「まち、ひと、しごと」は日本の地方では取り組みやすく、既存の社会資源を有効に使えば、5年単位10年単位で一定の成果が達成可能である。
これに対して、あまりにも一般論で具体性に欠ける公約、たとえば、「景気をよくする」、「物価を下げる」、「所得を倍増する」、「増税しない」などは、人為的に推進するためには、いくつもの媒介過程が必要になり、実現に向けたきちんとした「工程表」を示さないと、国民に理解してはもらえない。
社会資源をどう使うかの知恵比べ