ライト氏が就任するエネルギー省の使命は、「革新的な科学技術を通して、エネルギー・環境・原子力の課題に取り組み、米国の安全保障と繁栄を確保すること」であり、同省には、化石エネルギー・炭素管理局から原子力局、戦略石油備蓄局などがある。エネルギー省は、内務省や環境保護庁とともに、トランプ氏がエネルギーコスト削減の公約を果たすかどうかの中心となると言われている。

ライト氏は、2021年の全米保守党会議で、「石油、石炭、ガスから再生可能エネルギーへのシフトを試みている継続的な試みは、これまでで最大の政治的な誤投資であり、エネルギーコストを増加させ、信頼性を低下させる。彼はまた、化石燃料からの脱却の利点は、特に労働者階級や貧困層にとって、脱却に伴うエネルギーコストの増加と天秤にかけなければならないと主張している。

トランプ氏の再登場によって、米国の気候変動政策は大きく変わろうとしている。欧州でも新たな保守勢力が力をつけてきた。気候モデルを崇める空想社会主義的な気候運動に対しても異を唱えようとしている。

さて、我が国では第7次エネルギー基本計画が策定中である。今回の見直しでは、「2050年カーボンニュートラル」への中間目標として、2040年の削減目標と脱炭素電源の構成比率の想定をどこまで積み増すのかが、最大の焦点になっている。

2017年4月7日、経済産業省から『長期地球温暖化対策プラットフォーム報告書-我が国の地球温暖化対策の進むべき方向-』という報告書が出された。パリ協定発効後に出されたものだが、傾聴すべき重要なポイントを挙げている。

我が国が掲げる長期目標は、経済性を有する費用対効果の優れた革新的技術の開発・普及により、国際協調の下で、開発途上国を含めた世界全体の対策が進展する「最良」のケースにおいて、80%という抜本的な排出削減を目指すものである。

しかし、今後の様々な不確実性を踏まえれば、過度な規制の導入により産業が疲弊し、我が国の経済活力が失われて対策原資が枯渇してしまうことや、主要国の離脱や力のある途上国が総量削減目標に移行しないことにより、パリ協定が形骸化してしまうこと等の不測の事態に備えておく必要がある。