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「ニッポンの自動車」の概念を大変革した、ワゴンR
FF低床ハイルーフミニバンの台頭
「ニッポンの自動車」の概念を大変革した、ワゴンR
RVブームのさなかに登場した日本車の中でも、2024年現在に至るまでもっとも影響を与えた一台があるとすれば、スズキの初代「ワゴンR」(1993年)でしょう。
軽トールワゴンという車種は1970年代にホンダが「ライフステップバン」(ただし商用登録)、1990年には三菱からフルゴネットタイプの「ミニカトッポ」が誕生していたものの、いずれもヒットには至らず。
しかしワゴンRは単にハイルーフというだけではなく座面を上げて乗員のアイポイントを高く、視界を広くしたうえに、上げた座面下にバケツをセットするなど使い勝手の工夫もこらし、極めつけはやたらと天啓を受けてヒットを飛ばすスズキ名物・鈴木修社長(当時・現在は相談役)の「ワゴンもあ~る」から得た車名。
軽だけどステーションワゴンブームやRVブームに便乗した車種は他にもありましたが、これほどわかりやすく、名実ともに「軽のワゴン」だった車種はワゴンRが初。
おかげでダイハツ ムーヴなど数々のフォロワーを生みつつ、2011年にホンダがN-BOXを発売するまで軽自動車販売No.1車種となり、より背の高いスーパーハイトワゴンを含めたハイト系軽自動車や、ハイト系コンパクトカーの元祖となりました。
ある意味、現在も大人気なホンダ N-BOXやスズキ スペーシア、トヨタ ルーミーなども含め背の高い軽〜コンパクトカーは全て「ワゴンRの子孫」のようなもので、RVブームが生み出した最大の収穫とも言えます。
FF低床ハイルーフミニバンの台頭
1980年代までのミニバンといえば、「1960年代以来となるフルキャブオーバー1BOX商用車の乗用ミニバン」、「1982年頃から登場したFF乗用車ベースのロールーフミニバン」の2種類でありました。
そこへ1990年にアンダーフロアミッドシップでタマゴ型ボディの「エスティマ」がトヨタから登場、ただし予定していた新エンジン(S2機関)が開発中止となったためにパワー不足気味で、一回り小型化してディーゼルエンジンも加えたエスティマ エミーナ/ルシーダが1992年に登場します。
このエスティマ系も当時としては十分に革新的でスタイリッシュではありましたが、床下エンジンの悲しさでキャビンの騒音だけはフルキャブオーバー1BOX車と変わらず、RVブームにおける真の革命は1994年のホンダ初代「オデッセイ」から。
ただし、オデッセイにしても乗用車ベースのロールーフミニバンという意味では日産 プレーリー、三菱 シャリオ、マツダ MPVと変わらず、より革命的なミニバンとして誕生したのが、乗用車ベースながらもハイルーフのホンダ初代「ステップワゴン」(1996年)。
オデッセイやCR-V同様、RVブームに乗り遅れて気息奄々だったホンダらしく、なるべく予算をかけずに乗用車ベースで作りましたが、そのわかりやすい箱型ハイルーフボディと、FF乗用車並の快適性や操縦性は、質素な内外装による道具感も相まって大ヒット!
1999年には日産 セレナの2代目(C24系)が、2001年にはトヨタからもノア/ヴォクシーが同様のコンセプトでヒットしますが、原点となったのはステップワゴンでした。
特異だったのはデリカ・スターワゴンに続きパジェロ系のシャシーとパワートレーンにミニバンボディを載せたデリカ・スペースギア(1994年)を擁する三菱のミニバンSUV路線ですが、現在主流となっているFF低床ハイルーフミニバンも、1990年代RVブームの産物です。