しかし、12歳の選手がトップチームに上がるには約8年という時間がかかります。ベトナムの課題として、この中期ビジョンに堪えられるのか、目標を見失わずに進めるのか、というのがあります。見えない目標に向かって、地域とクラブが一丸となって努力し歩んでいけるのかというのが、私の挑戦。これに成功すれば、このクラブは間違いなくベトナムのロールモデルになると確信しています。

ー足達氏がクラブCEOになったこと、そして日本式アカデミー誕生により、日越サッカーの繋がりにはどんな影響が出てくるでしょうか?

足達:アカデミーの方針の一環として、“学業かサッカー”ではなく“学業とサッカー”というのを掲げており、両方できる人材を育てることを目指しています。ありがたいことに、クラブには日本人スタッフと通訳合わせて10人の日本語話者がいますので、子供たちへの日本語教育も始めています。通常の学業についても科目ごとに家庭教師を雇って成績を落とさないよう勉強時間を設けています。宿舎内に教室も作りましたし、学業にはサッカーと同じぐらい力を入れています。

日本サッカーには、他の国には見られないユニークなパスウェイとして、部活動だったり、大学サッカーだったり、または社会人、アカデミーなど色々な道筋があります。日本語力をつけたベトナム人選手が日本の大学でサッカーをしながら学士を取得して、Jリーグを目指すとか、あるいはVリーグに戻ってくるのでもいいですし、サッカーと学業を両立できる環境が日本にはあるので、そういうところに選手を送り出したい。これは一つの例ですけど、日本とのかかわりという意味では多岐にわたります。Jクラブとの育成提携を結んで、選手を派遣するというのも考えています。


グエン・コン・フオン 写真:Getty Images

指導者養成、スポンサー集めも

ー元Jリーガーとしてコン・フオンが加入したわけですが、今のところJリーグで成功したと言えるベトナム人選手は出ていません。今後Jクラブでプレーするベトナム人選手は増えると思いますか?