すると、脳の遺伝子のほうが大きかったため、染色体の大きさに違いもうまれます。
(※脳と脊髄はたとえであり、実際にはより多くの遺伝子の奪い合いが起きています)
またイモリは脳を備えた脊椎動物ですので、卵が正常に発達し生き残るには、脳の遺伝子も脊髄の遺伝子も両方必要になります。
そのため大きな染色体(A)だけしか持たない卵や、小さな染色体(B)だけしか持たない卵はどちらも遺伝子不足を起こして死んでしまったのです。
既存の説では小さな染色体(B)だけが遺伝子不足になると考えられていましたが、実際には大(A)小(B)どちらの染色体も遺伝子不足だったわけです。
研究では実際に、大きな染色体(A)と小さな染色体(B)のそれぞれにおいて、特定の遺伝子が2倍量存在していることが示されています。
逆に大きい染色体(A)が2本ある場合はなどは、特定の遺伝子が4倍体に近いというデータも得られています。
問題は、なぜこのような仕組みが続けられたかです。
同じ第1染色体が大きな染色体(A)と小さな染色体(B)の2種類に別れ、両方がなければ死んでしまう仕組みが解明されたとしても、卵の無駄を作るメリットまでは説明できません。
そこで研究者たちは、分析結果をもとに新たな進化のシナリオを描きました。
致死システムを維持する「進化のシナリオ」
なぜ第1染色体を大小の2種類に分け、両方がなければ生き残れないようにしたのか?
研究者たちは鍵となるのは先祖型の遺伝子を持つ近縁種であると述べています。
大小の染色体からなる致死システムを持っている集団に先祖型の集団が接触した場合、その子孫は全て混合型となり、第1染色体と大きな染色体(A)と小さな染色体(B)を全て持つことになります。
しかしこの場合、本来ならば第1染色体だけ、あるいは大きな染色体(A)と小さな染色体(B)1本ずつでよかったところに、余計な染色体が加わることになります。