またこの実験で用いられた言い訳は「上司から会議が始まる直前に仕事を頼まれ、それを終わらせてから来なければならなかった」でした。
実験の結果、参加者は、謝罪をした社員よりも、言い訳をした社員の方が「良い仕事をしそうだ」と評価したのです。
この言い訳がプラスの効果をもたらす現象は、会議に遅れてきた社員が遅刻常習犯であっても確認されました。
さらに、同僚たちが遅刻をした社員に対し文句を言わなかった場合、文句を言う場合と比較して、「この会社の社員は質が良い」と評価される傾向があったのです。
言い訳によって能力があると評価される理由は、言い訳が謝罪とは異なり、責任の一部を自分以外の要因にあることを相手に印象付け、遅刻の原因が自分の意思や能力とは無関係であることを伝達するからだと考えられます。
例えば「前の重要な会議が押したため遅刻した」というように、自分が予期せぬ外的要因に対処していたことを伝えると、周囲はその人を「責任感がある」「職務に真面目に取り組んでいる」と捉え、より好意的に評価する傾向があるのです。
ひとつ注意しなければならないのは、「前夜に飲みすぎて寝坊をした」や「レジャーや趣味などの私用が長引いた」などの理由では、今回確認された効果を再現することは難しいということです。
そのような言い訳では、遅刻の原因が本人の外的な要因に帰属すると考えることが難しく、相手の不満を和らげることができず、悪い印象を与えてしまうでしょう。
ちなみに謝罪は一切いらないかというとそうではありません。
後続の調査では、オンラインで参加者を募集し、直近の会議で遅刻してきた人を思い出し、その時の行動(謝罪・言い訳があったか)と遅刻者に対する評価を尋ねています。
その結果、ほとんどの参加者が、ただ謝罪するだけや言い訳をするだけの社員よりも、遅刻した理由の説明と謝罪があった社員を高く評価することが分かっています。