それは、エラスムス大学のデイビッド・クレマー氏(David Cremer)らが行った研究です。
彼らは、参加者にペアで、お金の貸し借りをさせ、片方の参加者にお金を貸したにも関わらず、思っていたより少額しか返ってこない状況を作り出しました。
そして、参加者を①相手に少額しか返すことができなかった人が「少額しか返せなくてごめんなさい」と謝るペアと、②謝罪がなく、相手から「謝られた」と想像するペアに分け、その謝罪に対する価値を評価させました。
実験の結果、実際に謝られた場合よりも、謝罪されることを想像した場合の方が、参加者は謝罪の価値を高く評価したのです。
私たちは何かトラブルがあったとき「謝れば許してあげよう」と思いがちですが、その想像は現実とは乖離しているようです。
たとえば「正直に言えば許してやる」と言っておきながら、いざ正直に謝られても簡単には許せないなど、皆さんにも覚えがあるのではないでしょうか。
これは、相手を困らせるためにそうしているわけではなく、私たちが「謝罪の効果」を過大評価しているから生じる現象と言えるのです。
では、もっと相手の心に響き、プラスの印象を与える方法はあるのでしょうか?
ここで参考になるのが、ネブラスカ大学の心理学者ジョセフ・ムロズ氏(Joseph Mroz)らが行った、職場での謝罪と言い訳に関する研究です。
遅刻した時の言い訳は回りの同僚からの評価を高める
彼らはオンラインで集めた約560名の参加者に、社員が会議に遅刻した場面の動画を見せ、その遅れてきた社員の仕事の能力を評価させています。
動画は、遅刻してきた社員の謝罪の有無をはじめ、遅刻の言い訳の有無、周りの社員が遅刻してきた社員に対し苦言を呈するか否か、社員が遅刻常習犯かどうかなどの組み合わせで、全12パターンありました。