この水は、周囲の雪や塵によって蒸発しにくい状態となり、地球の光合成生物にとっても生存可能な条件に近い環境が整うことになります。

火星における「生命居住可能領域」は、氷に含まれる塵の量や氷の粒子の大きさによって異なります。

さらに、火星表面で一時的に溶けた水が氷層の下に残ることで、液体の水が地表下で一部安定し、微生物が利用できる環境が整う可能性があります

地球の極地に生息する生物は、放射線が届く浅い地下で生きています。

氷の表面で暗い塵や土が熱を吸収し、氷を溶かすことで小さな「クレバス」が形成され、その内部に水が溜まるのです。

「塵を含む氷」が1年のうちのわずかな期間、地表で溶けているとすれば、地球と同様に、シアノバクテリア、緑藻、菌類などの微生物が、氷に混じった火星の塵から栄養分を摂取し、地表下の好ましい生息環境で、わずかな量の溶けた水を利用できる可能性があります。

これらの生物は極限環境での生存に特化した能力を持ち、短い間でも凍結から脱出して生き延びる術を持っています。

火星でも、地球で見られるような浅い地下生態系が存在する可能性が示されています。

紫外線放射の特定条件に適した深さにある氷は、地球の極地の環境と似た条件を持ち、そこで見られるような微生物、特にシアノバクテリアが生息できる可能性が考えられます。

この層は、表面から数センチから数メートルの範囲で、ロボットや将来の有人ミッションによってアクセス可能な場所となっています。

私たちが、これらの生命体と遭遇するのも、そう遠い未来ではないのかもしれません。

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火星の生命体候補に挙げられているシアノバクテリア(ラン藻類) / Credit : ja.wikipedia

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参考文献

Mars might harbor life under its icy surface — and now scientists know where to look
https://www.zmescience.com/science/news-science/mars-might-harbor-life-under-its-icy-surface-and-now-scientists-know-where-to-look/