結果として、「生命居住可能領域」は、「火星の緯度」「太陽天頂角」からの影響は小さく、概ね「塵の含有量」、「氷の粒径」の影響によって決定されています。
例えば、下図に示すように「塵の含有量」が約0.01%~0.1%含まれる氷では、深さ5cm~38cm、より清浄な氷(約10-6 %以下)なら深さ2.15m~3.10mの範囲に「生命居住可能領域」が形成される可能性があります。
すなわち、この範囲がちょうど微生物の生存に適した場所となり得るのです。
火星の環境下で生育できるバクテリアとは
火星の氷の中で、地球の生物が生き延びる可能性はあるのでしょうか?
興味深いことに、火星の氷層における紫外線の放射条件が、地球の光合成生物に適した環境に近いと考えられています。
火星の表面は、地球の大気によって守られている地球の地表に比べ、紫外線の放射が強いため過酷に見えますが、太陽光が透過する火星の氷の中には地球の微生物が生息可能な「生命居住可能領域」が存在する可能性があるのです。
火星の氷点下で水が凍結しないためには、約-18℃以上の温度と液体の水が必要ですが、火星の氷点下の温度では、自然に溶けることは難しい(気温は-56℃)とされています。
しかし、最近の研究によると、火星の中緯度地域で露出した積雪層には、限られた期間にごく浅い深さで氷が溶け、水が安定して存在する可能性が示されています。
例えば、火星の雪に微量の塵が含まれていると、氷層表面の数センチの深さで溶け出し、水の薄い層が現れるかもしれないのです。