図10の一次エネルギー供給量と同様に、図11の発電電力量でも、EU-28の電力需要は緩やかに減少しており、高所得国-改ではほぼ横ばいです。それに対し中国や中所得国-改の電力需要の増加は顕著です。

図11

この様な電力需要の傾向は、風力や太陽光発電の導入拡大に影響を及ぼします。

高所得国は電力需要が増加しないため、風力や太陽光発電を導入拡大しCO2排出削減することだけを行えば済みます。それに対し中所得は、電力需要の増加に応えるとともに、CO2排出削減も求められます。

経済成長のためには、安価な電力の安定供給が不可欠です。その結果、経済成長を目指し、設備投資の資金も乏しい中所得国は、電力需要の増加に火力発電などの従来型発電の増設で対応し、余力の範囲で少しずつ風力や太陽光発電を導入することになります。

図12の風力と太陽光発電の導入比率に示されるように、再生可能エネルギーの導入を主導してきたEU-28の導入比率が最も高く、次に高所得国-改と中国、中所得国-改と明確に分かれています。

なお、中所得に分類される中国は、高所得国-改と同等の導入比率です。中国のGHG排出量は、世界の排出量増加にとって大きな問題であるため、次項に記載します。

図12

中国の問題

中国は、国内で産出する石炭をエネルギー源に経済成長を遂げました。現在、中国1国で世界の石炭の半分以上を消費しいます。

図13

GHG排出量最大の中国は、2030年までにCO2排出量をピークアウトし、2060年までにネットゼロを達成すると表明しています。中国は面子に賭けて、2030年ピークアウトを達成すると思います。

その後は、経済成長を続けるためGHG削減をゆっくり進めるでしょう。2040年頃に先進国が2050年GHGネットゼロを概ね達成しそうなら、中国も2060年に向けて排出削減に努めると考えます。

低下したとはいえ経済成長を続ける中国は、今も石炭消費を増大させています。図14は中国国家統計局(Nationa Bureau of Statistics of China)が月次報告しているデータで、中国の近年の発電電力量の推移です。石炭火力が90%以上占める火力発電は増加を続けています。