人口の多い大国はGHG排出量が多くなるのは当然です。各国のGHG排出量の多寡を比較し、削減努力の不足などを評価するには、人口1人当りのGHG排出量が分かり易い指標です。
図7に、各グループの1人当りGHG排出量の推移を示しました。
近年の中所得国-改の1人当りGHG排出量は、高所得国-改の3分の1以下です。GHGの排出削減が進んでいるEU-28と比較しても約60%と低い値です。中所得国-改が、経済負担を伴うGHG排出削減に積極的でないとしても当然のことでしょう。
図8には、人口1人当りの実質GDPの推移を示しました。近年の中所得国-改の値は、高所得国-改の10分の1以下、EU-28の12%と極めて低い値です。中所得国が、経済成長を目指すのは当然のことです。しかし、経済成長はエネルギー消費を増大させ、GHG排出量を増加させます。
図9に、各グループのGDP成長率の推移を示しました。実質GDPの年次変化から算出したもので、変動が大きく分り難いため、3区間の移動平均を併記しました。
この数年の成長率は、新型コロナ流行による変動がありますが、高所得国-改やEU-28が2%以下であるのに対し、中所得国-改は3%前後かそれ以上で推移しています。
2010年前後にグリーン成長という考えが提唱されましたが、低成長でしか成り立たないことがその後指摘されています。また、近年先進国のGHG排出量が低減している理由として、製造業が先進国から発展途上国へ移行していることもあります。
図10は米国エネルギー情報局(U.S. Energy Information Administration)のInternationalデータを用いて作成したもので、各グループの一次エネルギー供給量の推移です。
近年、EU-28の一次エネルギー供給量は緩やかに減少しており、高所得国-改はほぼ横ばいです。それに対し中国や中所得国-改はかなり増加しています。