キリル1世はウクライナとロシアが教会法に基づいて連携していると主張し、ウクライナの首都キーウは“エルサレム”だという。「ロシア正教会はそこから誕生したのだから、その歴史的、精神的繋がりを捨て去ることはできない」と主張し、ロシアの敵対者を「悪の勢力」と呼び、ロシア兵士に闘うように呼び掛けてきた(「キリル1世の『ルースキー・ミール』」2022年4月25日参考)。

なお、ウクライナ正教会(モスクワ総主教庁系、UOK)の首座主教であるキーウのオヌフリイ府主教は2022年2月24日、ウクライナ国内の信者に向けたメッセージを発表し、ロシアのウクライナ侵攻を「悲劇」とし、「ロシア民族はもともと、キーウのドニエプル川周辺に起源を持つ同じ民族だ。われわれが互いに戦争をしていることは最大の恥」と指摘、創世記に記述されている、人類最初の殺人、兄カインによる弟アベルの殺害を引き合いに出し、両国間の戦争は「兄弟戦争(フラトリサイド)だ」と述べ、大きな反響を呼んだ。(「分裂と離脱が続くロシア正教会」2022年5月29日参考)。

モスクワのロシア正教会はキーウ政府のUOK禁止決定に対し、ウクライナの法律を激しく批判した。モスクワ総主教キリル1世が率いる聖シノドは「この法律が法治主義の原則に反し、多数派の宗教共同体を破壊することを合法化しようとしている」と主張している。

一方、フランシスコ教皇は25日のアンジェラスの祈りで、ウクライナでのモスクワに関連する正教会の国家による禁止に言及し、「祈りたいと思うすべての人を、その人が自分のものとする教会において自由に祈らせてください。お願いです、どのキリスト教会も直接的または間接的に禁止されるべきではありません。教会は侵すことのできない存在です」と述べている。

なお、ウクライナでローマに結びついた最大の教会であるウクライナ・グレコ・カトリック教会のシェフチュク大司教は23日、キーウ政府の新しい法律を擁護し、「ロシアがモスクワに関連するウクライナの教会を軍事化の道具として利用しているからだ」と説明している。