■世界の大事件の影に……
彼は取材に没頭した。すると、より複雑な事実に直面することになった。
オクトパスは、大企業、政治、軍隊、諜報機関の有力者で構成されていた。結びつきは緩やかで流動的ではあったが、そこには世界中に、かつ大規模に影響を及ぼすだけの骨格が出来上がっていた。
カソラーロが虎穴へとさらに踏み入ると、米ソの全面核戦争が懸念された1962年のキューバ危機と、ニクソン大統領を辞任に追い込んだウォーターゲート事件の影にも、オクトパスの関与が垣間見えた。そして1988年12月、スコットランドのロッカビーでボーイング747ジャンボジェット機が破壊され、計270人が命を落とした際にも…。彼が解こうとする謎は、より血なまぐさいものに姿を変えつつあった。
彼の調べたところによれば、オクトパスは世界一有名な秘密基地、米ネバダ州「エリア51」においても存在感を放っていた。オクトパスは同基地とニューメキシコ州北部の地下施設の双方へ、致命的なウイルスを作成するための研究資金を提供したと伝えられている。
スパイ活動、諜報活動の分野で長年働いていたマイケル・リコノシウートなる人物との接触を機に、カソラーロの取材はさらなる深みへと突き進んでいった。