社会の暗部に目を向け続けているジャーナリストが自らの命を絶つとき、ひとつの重大な疑念が湧き上がってくる。それは本当に自殺なのか? 死の背後に、情報の拡散を嫌う第三者の影があるのではないか?
このたび紹介するのは、世界を股にかけて暗躍する秘密組織と、謎の核心に迫ったジャーナリストの物語である。
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■秘密結社“オクトパス”
1991年8月9日、アメリカ東海岸ウェストバージニア州、マーティンズバーグに建つシェラトンホテル517号室の浴槽で、ダニー・カソラーロは非業の死を遂げた。
両手首が切り裂かれ、家族宛ての遺書が残されていた。典型的な自殺にも思われる。
が、事の成り行きを考えれば、それほど単純な出来事として片付けるにはふさわしくなかった。
彼は死の直前まで、オクトパス、すなわち「タコ」と名づけられた強大な秘密結社の存在を解き明かそうとしていた。
その名前の由来のごとく、地球上に無数の触手を張り巡らし、自在に影響力を行使する組織――。それがオクトパスなのである。