厚生年金加入者は定年後の再就職での働き方が明暗を分ける

厚生年金加入者が老齢厚生年金の受給額を増額するには、次の方法がある。

厚生年金加入期間の延長

定年退職後に厚生年金が適用される会社で働く場合、所定の条件を満たすことで厚生年金に加入できる。加入するには「週の所定労働時間が20時間以上」「継続して2ヵ月を超える雇用の見込み」「月額賃金が8万8,000円以上」という条件を満たせばよい。

フルタイムではなく、アルバイト・パートタイムの形で働く場合でも、労働時間を調整して厚生年金加入条件を満たせば年金受給額を増やせる。例えば、年収150万円で10年働いた場合は、受給できる年金額が年間で6万4,000円増となる。

なお、在職して厚生年金に加入している間に年金受給が始まった場合、年金受給額を毎年10月に改定して、新たに納付した分の保険料を反映させる「在職定時改定」という仕組みが適用される。

注意したいのは年金をもらいながら働いている場合、収入が多いと年金受給額が減らされてしまうことだ。

働きながら受給する年金は「在職老齢年金」と呼ばれ、その老齢厚生年金部分の月額と平均総報酬月額相当額(ボーナス額を考慮に入れた月収額)の合計が47万円以下であれば、年金は全額受給できる。

しかし、47万円を超える場合はその超えた分の金額が、老齢厚生年金の受給額からマイナスされることになる。

国民年金加入者は「国民年金基金」「付加年金」を検討

国民年金加入者が老齢基礎年金の受給額を増額するには、次の方法がある。

免除・納付猶予期間分の国民年金保険料の追納

国民年金保険料の免除や納付猶予、学生納付特例の承認を受けた期間があると、年金は満額受給できない。その場合、後から追納すると将来の年金受給額を増やせ、また、追納分には社会保険料控除が適用されるので所得税と住民税を軽減できる。

例えば、全額免除期間2年分の保険料約40万円を追納した場合、年金受給額は年2万円アップする。一方、納付猶予期間2年分40万円の追納であれば、年金受給額は年4万円のアップとなる。

40万円を追納した場合、課税所得金額が約300万円の人であれば、所得税と住民税が合わせて約8万円軽減されるので、実質的な追納額は40万円から8万円をマイナスした約32万円と考えてもいいだろう。

国民年金基金への加入

国民年金基金は、20歳以上60歳未満の国民年金加入者が上乗せして入ることのできる公的年金制度だ。65歳から一生涯受け取れる終身年金が基本で、そこへ支給開始年齢や保証期間の異なるさまざまなタイプの保険を組み合わせられる。

掛け金は全額、社会保険料控除の対象となり、確定申告することで税金が軽減される。受け取る年金も公的年金等控除の対象となる。

国民年金基金の公式サイトのシミュレーターで、課税所得450万円の人が40歳から終身保険A型(早期死亡時に「遺族一時金」が支給される)に1口加入したケースを検討してみると、毎月約1万3,000円の掛け金で年19万円の年金額となる。税金の軽減額も計算に入れると、実質的な年間掛け金は約11万1,342円となった。

付加年金の納付

20歳以上60歳未満の国民年金加入者は通常の保険料に月額400円の「付加保険料」をプラスして納付することで老齢基礎年金に付加年金分を上乗せした金額を受給できる。

ただし、国民年金保険料の納付の免除・納付猶予・学生納付特例を受けている人、国民年金基金の加入者、iDeCoの掛け金が6万8,000円に達している人は付加年金に加入できない。

付加年金分の受給額(年額)は付加保険料納付月数に200円をかけて求められる。例えば、20年間付加年金に加入した場合、年額4万8,000円を通常の年金分に上乗せして受給できる。

年金を増やす方法を実施するうえでの注意点

見てきたように、年金を増やす方法は公的なものも含めいくつか提供されている。受給繰り下げを除くと、いずれも保険料の掛け金を支払う必要があるため、その分の経済的負担も考慮して無理のない納付計画を立てるべきだ。

受給繰り下げでは、待機期間の年金受給がないため、その間に無理なく生活できるのかどうか、急な出費に対応できるのかどうかを事前によく検討しておいたほうがよい。

文・モリソウイチロウ(ライター)
「ZUU online」をはじめ、さまざまな金融・経済専門サイトに寄稿。特にクレジットカード分野では専門サイトでの執筆経験もあり。雑誌、書籍、テレビ、ラジオ、企業広報サイトなどに編集・ライターとして関わってきた経験を持つ。

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