一方、今回の研究では野生植物だけでなく、人間の品種改良を受けた農業種についても分析が行われました。
すると野生種とは違い、農業種には耐性と成長能力の負の相関関係が見られないことが判明しました。
人間の管理のもと育てられる農業種では、自然環境と異なる人間の好みによる選択が行われていることが原因だと考えられます。
今回の発見は、植物が自然の中でいかに限られたリソースを効率的に配分しているかを示しています。
このメカニズムを活用すれば、将来的には植物の遺伝子操作や交配によって、適切なバランスを保ちながらも、強靭で成長速度の高い品種を育てることができるかもしれません。
このような技術は絶滅危惧種の植物の個体数を回復させるのに役立つと期待されます。
また植物の耐性システムの理解が進むことで、今後は、特定の環境に適応した効率的な植物の育種や、地域ごとの環境変化に対応できる作物の開発が可能となるでしょう。
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参考文献
Defense or growth – How plants allocate resources
https://www.helsinki.fi/en/news/life-sciences/defense-or-growth-how-plants-allocate-resources
元論文
A trade-off between investment in molecular defense repertoires and growth in plants
https://doi.org/10.1126/science.adn2779
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。