彼らは生殖能力に全てを注ぎ込んだ遺伝子セットを獲得した結果、動物にとって基本的なパーツであるはずの「口」を失い「餓死する前に子孫を残す」という運命を背負わされることになります。
カゲロウの寿命は極端に短い!「口がなく眠る必要もない」って知ってた?
ウスバカゲロウほど極端な例はまれですが、他の動物も多かれ少なかれ、遺伝子の獲得による恩恵(バフ)と不利益(デバフ)の両方を受けています。
植物の世界も同じであり、たとえばアスパラガスを感染から守る耐性遺伝子(R遺伝子など)の数と成長能力の関係を調べると、耐性遺伝子の数が多くなるほど成長速度が鈍化することが報告されています。
ゲーム風に言うならば「耐性」にステを降り過ぎると、「成長(レベルアップ)」しにくくなるデバフを受けてしまうと言えるでしょう。
もしそのまま極端さを追求し続けた場合、耐性だけは最強なのにレベルアップが絶望的に遅いキャラが誕生してしまいます。
それでも構わずゲームを始めれば、低レベル時には何度もゲームオーバーを迎えてしまうでしょう。
ゲームならばやり直しができますが、生物は死んだら終わりです。
そのため現実世界には、耐性だけ最強で、初期状態(双葉状態など)から何年も成長しないような植物はほとんど存在しません。
同様の耐性と成長速度の負の相関関係はアスパラガス以外の植物でも報告されています。
しかし個々の植物を調べるだけでは、植物全体で同じ傾向があるかはわかりません。
アスパラガスの研究から「断言」できることは、アスパラガスについてのみです。
マウスで効いた抗がん剤が人間で効かないケースがあるのも、マウスでの実験結果をそのまま人間に当てはめられない証拠です。
そこで今回、ヘルシンキ大学の研究者たちは、これまで収集された植物の研究データを分析し、耐性遺伝子と成長能力の広範な関係を調べることにしました。