吸血する時間は長くて20分程度で、最大で自身の体重の40%に相当する量の血液を吸います。
その結果、食事後は血液の重量や消化のために飛ぶことができなくなり、再び地面を歩いて帰宅するのです。
「吸血鬼」はコウモリに変身して夜空を飛び回りながら移動するイメージがありますが、実際の吸血コウモリは、地面を走って移動する場面が多いのです。
翼を持つコウモリが地面を走る姿はそれだけでもユニークで面白いですが、研究者はここから彼らについてもっと深い洞察が導けることに気づいたのです。
吸血コウモリはどのようにエネルギーを得ている?
最近、カナダのトロント大学(University of Toronto)に所属するケネス・C・ウェルチ氏ら研究チームは、吸血コウモリの代謝メカニズムに注目した研究を行いました。
私たち人間を含むほとんどの脊椎動物は、アミノ酸(タンパク質を構成する有機化合物)を燃焼させることが苦手で、主に炭水化物と脂質を代謝することでエネルギーを得ています。
例えば哺乳類の場合、低強度の有酸素運動は、主に脂質によってエネルギーが供給され、運動の強度が増すにつれて、炭水化物に頼る割合が高まります。
一方で、無脊椎動物であるハエの一種「ツェツェバエ(学名:Glossinidae)」は、血を吸うことで知られており、血液中のアミノ酸を燃焼させてエネルギーにしていることが分かっています。
では、脊椎動物である吸血コウモリ(ナミチスイコウモリ)は、どこからエネルギーを得ているのでしょうか。
吸血コウモリが主食とする血液にはタンパク質が豊富に含まれており、ほとんどの哺乳類がエネルギー生成に頼っている炭水化物と脂質が乏しいため、他の脊椎動物と同じような代謝方法では、十分なエネルギーを生成できないはずです。
そのためウェルチ氏は、吸血コウモリもタンパク質を構成するアミノ酸からエネルギーを得ているのではないかと考えていました。