どうして、そんなことになるのか。よく言われる日本社会の「同質性の高さ」が、やっぱりここでも関わっていると思う。
むかし本で詳しく説明したけど、「予言の自己成就」という有名な概念がある。あの銀行は危ない、とする予言が広まると、預金を引き出す人が殺到して、本当に危なくなる、みたいなやつだ。
つまり「危ない」という主観的な価値判断が、実際の金融危機という客観的な現実に化けることは、よくある。その意味では、主観と客観をごちゃまぜにする人を一概にバカにできるかというと、そうとも限らない。
さて、トランプ当選に際しても社会の分断が云々されるけど、メディアで何か言っても「シラネ」「信じないし」とあしらう人の多い世の中では、主観は客観に化けにくい。逆に、おおむねどのメディアの論調も均一で、視聴者が一方向にガバッと動く社会では、予言が自己成就しやすい。
後者の典型が日本だが、そうした国ではメディアの中の人ほど、「別に、主観でも客観でもいいじゃないか。どうせ化けるんだから」という気持ちになりがちだ。でも、アメリカは前者の究極系だから、CNNではこう言ってますみたいな話をいくら重ねても、FOXを見る人には関係ない。