この結果は、私たちが先入観から考古学的遺物を誤って解釈しやすい恐れがあることを示唆しています。

確かに「命が危険にさらされた時の家族の絆」は、私たちの頭の中に「心を打つ物語」として想像しやすいものです。

それは、多くの人の関心を集め、広く普及するものでもあるでしょう。

しかし、情報が限られた考古学においてそうした、こうした先入観や想像しやすい内容で当時の状況を推測をしてしまうと、過去の状況について大きな誤解をしてしまい、それを一般にも広めてしまう恐れがあります。

研究チームも、今回の結果は、「現代の価値観に基づく誤った解釈を避けるために、遺伝子データと考古学的・歴史的情報を統合することの重要性を浮き彫りにしています」とコメントしました。

考古学では、現代とは異なる価値観、文化を持った人々を理解しなければなりません。

ブレスレットをしているから女性だ、子供を抱きしめているから親子だ、そうした先入観や解釈は、当時の人々の文化や多様性を誤って理解してしてしまう恐れがあります。

私たちは、自分が好きな物語ではなく、事実に基づいて物事を見るよう意識しなければならないのです。

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参考文献

DNA evidence rewrites story of people buried in Pompeii eruption
https://www.mpg.de/23699890/1106-evan-dna-evidence-rewrites-story-of-people-buried-in-pompeii-eruption-150495-x

元論文

Ancient DNA challenges prevailing interpretations of the Pompeii plaster casts
https://doi.org/10.1016/j.cub.2024.10.007

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。