古代ローマの都市である「ポンペイ」は、西暦79年に起きたヴェスヴィオ山の大噴火で滅びました。

このポンペイの遺跡で有名なのが、火砕流で生き埋めになった市民たちの様子が火山灰の層に空洞となって残っており、ここに石膏を流し込むことで当時の様子が再現できたことです。

例えば、「母が子供を覆い隠して守ろうとする親子像」は有名であり、多くの人がその親の愛情と親子を襲った悲劇に心を打たれました。

しかし最近、ドイツのマックス・プランク進化人類学研究所(Max Planck Institute for Evolutionary Anthropology)に所属するアリサ・ミトニック氏ら研究チームが、その推察が全くの間違いだったことを示しました。

DNA鑑定により、その2人は親子ではなく、赤の他人であり、しかも母親だと思われていた人物は男性だったと分かったのです。

研究の詳細は、2024年11月7日付の学術誌『Current Biology』に掲載されました。

目次

  • 人々の心を打つ「ポンペイ住民の石膏像」
  • 「噴火から逃げる母子像」は、赤の他人で両方とも男だった

人々の心を打つ「ポンペイ住民の石膏像」

イタリアのカンパニア州には「ヴェスヴィオ山」と呼ばれる火山があります。

この山は現在も活火山であり噴火の恐れがある監視対象となっていますが、西暦79年に特に大きな噴火事件を引き起こしました。

ヴェスヴィオ山が大噴火を起こし、当時、山の麓にあった都市「ポンペイ」を大量の火砕流が襲ったのです。

画像
ジョン・マーティン作『ポンペイとエルコラーノの壊滅』(復元版),1821年 / Credit:Wikipedia Commons

古代都市ポンペイは滅び、その姿は火砕流と火山灰によって完全に埋もれてしまいました。

この時に発生した火砕流の速度は100km/h以上であり、ポンペイ市の住民は逃げることもできず、一瞬のうちに全員が生き埋めになります。