NASAはアポロ計画を良い形で終わらせたいと考え、アポロ17号では、より長いミッションが行われました。
17号のミッションでは、最も長く宇宙に滞在し、最も長く月面活動を行い、最も多く月面からサンプルを持ち帰り、最も長く月周回軌道に滞在するなど、数々の記録を打ち立てたのです。
この最後のミッションでは、初めて正規の科学者(シュミット氏)が同伴しました。
アポロ計画では、宇宙飛行士の多くは軍のパイロットや航空エンジニアなど、主に操縦やミッション遂行能力を重視したメンバーで構成されていたため、科学者がついていくというのはこれが初めてだったのです。
シュミット氏は地質学者であり、アポロ17号で収集された大量のサンプルや詳細な地質データは、月面地質学の理解を大きく進展させました。特に、この調査では月の火山活動の痕跡も発見され、月の進化過程の新たな側面が浮き彫りにされました。
また、このシュミット氏は月の塵にアレルギー反応を起こした人類最初の人物となりました。
これほど目を引く記録があるにも関わらず、このミッションはテレビでほとんど放送されませんでした。
月面着陸も6回を数えると、それはゴールデンタイムを賑わすビッグイベントではなく、日常的なものになっていたのです。
この事実は、一般の人々に科学調査研究に関心を持ってもらうことの難しさや、その意義を伝えることの難しさを示していると言えるでしょう。
月面を歩く13人目は、2026年に誕生するかも
人類が最後に月面を歩いたのは、1972年です。
アポロ計画の終了後、NASAは宇宙開発の優先順位を変化させてきました。
月面での活動の後は、人類の低軌道上での活動や、長期滞在型の宇宙ステーションに注力する方向へとシフトしたのです。
また他の惑星への探査計画の関心が高まり、月面探査よりも火星探査や宇宙望遠鏡による深宇宙観測に予算や技術が振り向けられるようになりました。