大学院以上の学歴の持ち主でも7年間の累計で時給がやっと±ゼロだったことに驚きます。もちろん、大卒以下の学歴の人たちは全部7年間の累計で時給が下がっています。この事実と次のように「学歴はペイする」と示唆するグラフとはどう折り合いがつくのでしょうか。

前のグラフは時給で、こちらは年収だということで説明がつきます。大卒の中でも一流大学出で、新入社員の頃から高給取りだった人たちは、国際金融危機以降あまり大きな波乱のなかった金融市場で利植ができていたのでしょう。

同じ大卒でもそれほどランクの高い大学ではなく、新入社員の頃は生活を維持するのにぎりぎりの給与所得しかなかった人たちは、出発点は違っていてもパターンとしては高卒者と同じような経路で33年間の通算で実質所得は下がっていたのだろうと思います。

だからこそ、高騰を続ける大学授業料との兼ね合いで考えても「大学教育はペイしない」と考える人が2013年の40%から2023年の56%に増えたのでしょう。

アメリカの大学は不思議なところで、授業料が高いといっても実際に高い授業料を払っているのは、約4分の1の富裕層の子女だけです。残りは弁済不要の奨学金をつけて全米各地から招き寄せる成績優秀な高校生、将来有望な留学生、そして機会均等枠で採用するマイノリティの子女となっています。

こうしてご紹介すると、金持ちになるほどケチになる富裕層が、どうせ授業の中身は頭の上を通り過ぎていくだけの子どもたちに実質約4人分の高い授業料を払って一流大学に行かせる理由が、非常にわかりにくい気がします。

ところがちゃんと採算は合っているのです。富裕層の子女にとって、一流大学は授業を受けに行く場所ではありません。将来社会に出てからいろいろと助け合うコネをつくるために行くのです。

それにしても、だれとどこでどうつながっているかの総体が当人の人格だという割り切り方も、教育とはコネを維持するために受けるものだという教育観も、なかなか常人に思いつける発想ではなく、長年にわたる富裕層の生活実感が積み上がって結晶したものなのでしょう。

トランプはエリート社会に風穴を開けたが・・・・・・