しかし上段でもふたつ疑問な点があります。まず1%エリートの中で一流12大卒でもエリート主義者でもない人はどれくらいの人数がいるのか、統計として意味のある数値になっているのかと思います。

また「たいていの場合連邦政府は信用できる」という回答が58%に達しているのは、2割前後に下がっている一般大衆とは大違いです。結局、エリートはエリートなのでしょう。

下段では初代大統領ジョージ・ワシントンの掲げた理念の普遍性に比べて、進歩主義的エリートだったウッドロー・ウィルソンの政治は密室の中にとどまっていたと評価しています。

ここで問題なのは、ワシントンの自由・平等・自治は殲滅の対象とした先住民、アメリカン・インディアンや奴隷とした黒人は排除した上での理念だったことです。この点では、多少問題意識があるのはエリートのほうで、一般大衆はまだ圧倒的にワシントン聖人視から脱却できていません。

この「遅れた民族は暴力によって排除していい」という思想というより皮膚感覚は、伏流水のように潜在していて、トランプのような排外主義的ポピュリストが登場すると一挙に噴出してきます。

他の点では善良な多くのアメリカ国民、とくにプアホワイトと呼ばれる人たちがいつまでも白人優越主義を克服できないのは、彼らの富がどんどん1%エリートに吸い上げられていって、他には誇れるような特徴がなくなってきたことと関係していると思います。

ご覧のとおり、ついに2023年にトップ1%の家計資産が上から21%目~80%目までの60%の世帯の家計資産を抜きました。昔は中流と呼ばれていたけれども今では到底中流と呼べるような余裕のある生活はできないこの60%の世帯は、平均でトップ1%の60分の1の資産さえ持っていないのです。

この点については、アメリカが日本とは違ったかたちで高度学歴社会になっていることと大いに関係があると思います。まず2007~14年の学歴別時給推移をご覧ください。