そしていろいろと批判が噴出している専門家集団についても、1%エリートの方々の信頼は全然揺らいでいないようです。

エリート以外の99%の人たちのうちたった6%しか連邦議会議員に好感を抱いていないというのは、アメリカ政治全体の危機だと思います。

そして再選を目指したトランプが唱道する「アメリカを再び偉大に(Make America Great Again、MAGA)」があれだけ熱気を帯びた政治運動となったのも、アメリカ国民の大半が政治から疎外されているという意識が強かったことを示しているのでしょう。

しかし、1%エリートたちはそんなことにはまったく無頓着で、むしろ「無知な大衆に何がわかるのか。われわれ専門家に任せておけばいいのだ」という態度を貫いたようです。気候変動についても、同様のことが言えます。

まず温暖化が進んでいるかどうかに疑問があり、温暖化が悪いことかどうかにも疑問があり、温暖化が進むのは人為的に排出する二酸化炭素の量が多くなりすぎたからだという議論にも疑問がある中で、一方的に「あれをするな。これをしろ」と指図されることに一般大衆は嫌気がさしているのでしょう。

先進諸国の有力政治家たちの中でトランプは当初から温暖化危機説に懐疑的だったことも、大衆の支持を掴んだ一因なのではないでしょうか。

1%エリートの77%がこの問題を大衆操作の手段として利用しようとしているのに対して、有権者一般の63%はそうして引きずり回されることを拒絶しています。

また、現代アメリカ社会の問題点と優先課題について有権者全体は「大卒資格のない人にも収入のいい仕事を用意すること」と回答しているのに対して、1%エリートは「だれもが大卒資格を持つこと」と回答しています。

アメリカもまた日本同様に、いや日本以上に学歴社会なのですが、その学歴の中身は大きく違います。この点については、あとで詳述します。

国際情勢がらみでは、有権者一般は直接労働市場や製品・サービスの輸出入で競合する立場にある中国や非合法移民を非常に警戒していますが、直接競合する立場にない1%エリートはこうした問題に無関心に近い冷淡さだとわかります。