ここで、4点通過直線の方位が当該地点の夏至の日没方位および冬至の日出方位を示すという説は、考古学の研究者が作成した平面図(引用:『縄文時代の考古学』)に依拠するものでした(図3)。しかしながら、この平面図はGoogle Mapに描かれている遺跡の位置関係とは大きく異なるものです。

図3 大湯環状列石と夏至の方位関係(『縄文時代の考古学』から引用)

4点通過直線の方位が夏至の日没方位および冬至の日出方位と一致すれば、それはそれで学術的発見ですが、科学的事実を曲げることには何の意味もありません。いずれ誤りとわかることです。

ただし、大湯環状列石の幾何が夏至の日没および冬至の日出と全く関係していないとは限らない事実があります。それは、一方の日時計状組石を出発点とする2直線は、もう一方の環状列石を高精度で外接しているということです。一つの仮説として、この位置関係から夏至の日没及び冬至の日出を同定できるよう日時計状組石のレイアウトを決定した可能性があります。

さて、そうであるのならば、4点通過直線の方位は何を意味しているのでしょうか。ここにひとつ有力な事実があります。それは、4点通過直線の方位が立秋の日没方位とほぼ一致するということです。ここで立秋とは、夏至と秋分の中間点にあたり、21世紀では8月7日ごろを指します。

図4は、当該地点におけるBC2000~1500年の立秋の日没の方位を50年間隔で計算し、その平均値をGoogleマップの衛星画像上にプロットしたものです。

図4 大湯環状列石と立秋の日没方位の関係

自分でも目を疑いましたが、当該地点における立秋の日没方位を示す方位線は4点通過直線と正確に一致しています。

ちなみに、立秋の日没方位については、太陽の黄径が135度に最接近する日没位置から、立春の日出方位は太陽の黄径が315度に最接近する日没位置から算定しました。以上の分析の根拠としたデータを表1に示します。

表1 大湯環状列石から眺める太陽の方位