ハリス氏はすぐに敗北宣言をして、トランプ氏勝利を確定した。アメリカの識者の間での「選挙結果はかなりの期間、確定しない」という予測もみごとに外れたわけだ。
第2にはドナルド・トランプ氏の強烈な指導性である。同氏ほど敵陣営から叩かれ、けなされ、迫害された政治指導者は歴史でも類がない。その種の障害をすべて乗り越え、アメリカ国民多数派の支持を確保した同氏自身の意思、能力、リーダーシップは特筆されるべきだろう。
トランプ氏は2016年の大統領選挙で当選した当初から「ロシア疑惑」をぶつけられた。「トランプ陣営はロシア政府工作員と共謀して2016年の選挙の有権者票を不当に操作した」という疑惑は結局はなんの根拠もないことが判明した。しかもその疑惑の最大の証拠とされたスティール文書というのは米側の民主党陣営の意を受けたイギリス政府元スパイの捏造だったこともわかった。
しかし民主党陣営はニューヨーク・タイムズのような大手メディアと結託し、トランプ大統領を特別検察官の捜査の標的として、攻勢をかけた。同時に民主党活動家の検事たちがトランプ氏を合計4回も起訴した。議会では弾劾が2度も提起された。
しかしトランプ氏はこの種の民主党側による「連邦機関の武器化」をすべて跳ね返した。その基盤には同氏を支持する多数のアメリカ国民の意思があった。そして同氏の掲げる自国第一の政策の基本への強い支持があったのだ。
さらにトランプ氏は選挙戦中の2回にもわたる暗殺の試みをも跳ね返した。
第3には、カマラ・ハリス氏という人物の政治指導者としての脆弱性である。民主党側の予備選という重要なプロセスを経ないで突然に候補となったハリス氏は副大統領時代には「史上、最低人気の副大統領」とされていた。その弱さが結局は多くの有権者を離反させたといえる。
しかしハリス氏は一時は高い支持率を示した。トランプ氏を追い越す期間も続いた。その原因としてはジョセフ・バイデン大統領の衰えに替って、ハリス氏が元気いっぱいの挙動で登場したことや、大手メディアがハリス氏を天まで昇れという調子でほめたたえたことがあった。