ソ連の都市伝説2
クワス樽の中の猫の死体
ソ連は鉄のカーテンで世界と隔てられており、社会はアメリカとは大きく異なっていた。しかし、ソ連の消費者の噂は、意外にも西欧や米国の噂と似ている。欧米では、大企業の製品について「暴露話」をするのに対し、ソ連では、国営企業の食品について同じような話をした。ハンバーガーやコカコーラの缶の中にネズミのしっぽが入っていた、というのが欧米の典型的な話だが、ソ連にはそのような大企業はなかったため、地元の企業が製造したソーセージについて、同じような話をした。1960年代から、そのような話は噂されるようになり、最も広く知られているのは、食肉加工工場で、ネズミが大量に発生し、それがミンチ肉の入った桶に落ち、粉々になってソーセージになったという噂である
さらに、ソ連でも都市化が進み、見知らぬ人から買い物をすることの危険性が語られることが多くなった。その危険性は、売り手が買い手と個人的に知り合いでないことに起因するという。
夏になるとソ連の街角でクワス(ノンアルコール飲料)が樽で売られるのだが、樽の底には犬や猫の死体が沈んでいるという都市伝説が語られた。この話を聞いて、親は子供に「クワスは顔見知りの売り子から買いなさい」と話したそうだ。
何千人もの人々が、誰もがお互いを知っている村の文脈から移動し、新しいタイプの匿名の都市での交流にすぐに慣れることができなかったことから生まれた都市伝説と言えるだろう。