ソ連では検閲が厳しく、うわさや都市伝説は特別な地位にあった。人々は、公式の情報が信用ならないことを知っていたため、非公式な情報源(例えば「友人の姉が聞いた」というようなもの)に対する信頼度は非常に高かったという。

 1947年、ソ連からの亡命者を対象に、ソ連の日常生活における普段の情報源について調査を行ったところ、亡命者の74%が友人との会話の中で噂について定期的に話し合い、50%が噂は自分にとって定期的な情報源であると答え、22%の事務員、41%の労働者、73%の農民が最も重要な情報源として噂を挙げていることがわかった。

 そうした状況であるから、ソ連では「都市伝説」というべき民間伝承が多く生まれた。今回はその中ら4つの話を紹介しよう。

ソ連の都市伝説1
危険なサイン

「危険なサイン」という話は1936年から1938年にかけて、スターリンによる「人民の敵」の裁判が行われたとき、ソ連の人々は変装した「敵」がソ連の日用品に残したとされる隠し記号(卍、トロツキーの顔、反ソ連のスローガン)の話をお互いにしたという。それらは見間違いレベルの些細なもので、たとえばマッチ箱に描かれた炎のイラストがトロツキーの横顔に見えるという、言いがかりのようなものが多く含まれていた。

 ソ連当局は、この隠されたサインを見つけるために躍起になった。新聞は「人民の敵」はいたるところで活動しており、その姿は忠実なソビエト市民と見分けがつかないと繰り返した。検閲官や編集者は、絵のハッチングや、絵と文字の組み合わせに隠されたサインを見逃さないように、印刷物をより注意深く調べるように厳しく指導された。新聞編集者や画家は、この「警戒心」の欠如の代償として、自由や命さえも失うことになりかねなかった。

 マッチ箱のラベル、ネクタイのクリップ、近所の店のケーキ、ソ連指導者のボタンや儀礼用の肖像画など、普通の人々があらゆるところに危険な兆候を探し、見つけるようになったのである。このような大規模“捜索”と新しい「発見」の噂は、あっという間に広がった。

特殊な状況で語り継がれた「ソ連の都市伝説4選」クワス樽の猫、赤いフィルム、ブラックヴォルガ…
(画像=画像は「Spokus」より,『TOCANA』より 引用)