♪ち~よ~に~いいや~ち~よ~に
野心的な技がほかにもいろいろ使われている。そういえばこの「君が代」は、サイバーパンクSFアニメ映画のモダンクラシック「攻殻機動隊」(1995年)の主題歌のようだという反応が相次いだ。実際、2020年の東京大会に向けて、日本製アニメ、まんが、ゲームの有名キャラクターがオールスターキャストで祭典を盛り上げる計画が進んでいたという。
祭りの後でその顛末は私たちの記憶にあるとおりだ。1兆6989億円の経費(うちパラリンピックが1514億円)の割には、歴代大会で最も記憶の薄いオリンピックとして、「貧乏くじを引かされた」「開催前から消化試合」と、今後もジョークの種にされていくのだろう。
無観客のスタジアムに、各国代表が「ドラゴンクエスト」のテーマ曲とともに行進していく様は、かえって清々しかった。国際五輪委員会のバッハ会長の、少々長すぎる前説に、選手たちがだんだん地面に座り込んでいく映像中継も、それはそれでいい味だった。
無観客ではなく、満席のスタジアムにあの曲が鳴り響く、そんな入場行進を拝みたかった。2024年パリ夏季五輪の開会式についてはいろいろ言いたいことがあるが、あの中継に見入りながら、私はもっと違うことを考えていた。
中国・武漢で変種ウィルスが発生しなかった世界線で、聖火とともにアベノミクスは日本を再生させ、そして私の父はコロナ禍の重苦しい空気に呑み込まれず、今も生きていたのだろうか、と。