政治
2024/11/09
あの「君が代」がもしパリを彩ったならば
「君が代」はハ長調、すなわち白い鍵盤で弾く曲だ。しかし四つ目の小節を見ると、「D7」と「B7」とある。これは黒鍵もいっしょに使わないと鳴らせない和音だ。
ドイツ和声の理論では「ドッペルドミナント」とか「破調」とかの名づけによって、いちおうハ長調の枠内とされる。
しかしこの「D7」と「B7」は、ハ長調の和音ではない。「D7」はむしろ、ト長調における属和音であり、「B7」もその双子の妹・ホ短調の属和音である。
ドイツ人編曲者の本当の狙いは、ハ長調と思わせて、実はト長調、そしてその双子の妹・ホ短調という三重性をもってして、この二代目「君が代」に受け継がれた雅楽のDNAを、なんとか巧くベートーベンやブラームスなどのドイツ的正統派音楽の枠に収めてみせることだった… と、後世からの後付け解釈ではあるが、思えてならない。
リオ五輪のためのシン・君が代シン・君が代に話を戻そう。編曲者はどういうことを心掛けたか。
念頭に置いたのは、まずはメロディ本来の美しさを引き出す事、東欧的なハーモニーを基調としながらも、雅楽の要素や近代クラシックなど西洋音楽の影響、さらにジャズの影響をハイブリット化させることでした
公式の楽譜は発売されていないようなので、いくつかの再現動画に耳を傾けてみて、ヴォーカロイドによる四声のこれを選んでみた。
出だしの二小節で耳を奪われたという方も、当時多かったのではないか。なにしろ原曲の合唱では伴奏はなくて、オーケストラ演奏のときも、すべての楽器で同じ音符が奏でられるのが常だった。
(指揮・小澤征爾/新日本フィルハーモニー 編曲・池辺晋一郎)
そこをリオ五輪版は、独自のハーモニーで幕あけしたのだった。
♪き~み~が~あ~よ~お~わ~
「ラ・レ・ソ」の和音がここには聞き取れる。もしお手元に鍵盤楽器があるならば、ラ・レ・ソの鍵盤を、いっしょに鳴らしてみてほしい。
関連タグ
今、読まれている記事
もっと見る
関連記事(提供・アゴラ 言論プラットフォーム)