部屋にあったのは、何本のものケーブルが繋がれた金属製の椅子であった。椅子にはいくつものボタンがあり、行きたい時代を入力するようになっていた。この椅子に座った人物がタイムトラベルをするのだが、肉体のみならず衣服やそのポケットに入っているものまで一緒にタイムトラベルできるという。だが、この椅子はここに残ったままだということだ。
ガリバーを使ったタイムトラベルは“出発地”ではほんの一瞬で往復して終わるものなのだが、本人の主観では“到着地”に50~70分の間滞在する旅になるということだ。
実際に目にしたタイムマシンがあまりにも“しょぼい”ものであったことから、彼女の熱は一気に冷めてコズロフ氏の言葉を疑いはじめたという。そしてタイムマシンを完成させて何度もタイムトラベルしているのに、どうして世に公表しないかを問い質した。コズロフ氏の言い分は、もし公表すればさまざまなよからぬ目的で使われたり、富裕層相手のビジネスになってしまうことを危惧してのことであるという。
しかしながら世に公言できない最大の理由は、悲劇的な人類の行く末であった。なんと、未来のある時点で人類社会ではAI(人工知能)とロボットのクーデターが起こり、世界は彼らに乗っ取られてしまうというのである。そして、コズロフ氏は未来でロボットに襲われて一度殺されたのだという。