1995年、ベルギーリーグ2部のRFCリエージュに所属していた凡庸な選手に過ぎなかったジャン=マルク・ボスマン氏(同年引退)が、UEFA(欧州サッカー連盟)を相手取りECJに提訴。「契約が切れた選手の移籍の自由」と「外国人枠の撤廃」を勝ち取り、欧州の移籍マーケットが一気に活気付いた「ボスマン判決」があった。

「ボスマン判決」によっては、Jリーグでプレーする日本人選手が契約切れを待って欧州へと渡っていく「ゼロ円移籍」が頻発することになった。そしてJクラブにとっても、重要な選手に対しては複数年契約を結ぶきっかけとなっていく。

今回の「ディアラ判決」は、選手に寄り添った判決だったはずが、時が経ち、いつしか選手を苦しめる結果となりかねない。欧州の移籍マーケットにどのような影響を及ぼすかは今のところ未知数だが、現在の移籍金ビジネスが減ることは、代理人にとっても飯の種が減ることを意味する。

23歳以下の日本人選手が欧州でステップアップ移籍をする際に発生し、日本時代に所属したJクラブのみならず出身高校や中学にまで支払われる「育成補償金」も期待できなくなるだろう。

「ボスマン判決」の反作用としては、有力日本人選手に近付きゼロ円移籍を実現させ、その結果、Jクラブから“出禁”となる悪徳代理人が蔓延る事態を招いた。そして現在、「ディアラ判決」を受け、代理人たちも自分たちがどう振る舞うべきか熟考しているだろう。もう“選手転がし”だけでは食べていけない時代になっていくからだ。

もちろんJクラブ側も、欧州移籍を希望する選手が自チームにいるならば、それに沿った契約を結び、“育て損”とならない方策が必要となるだろう。仮にも最新のFIFAランキングで日本は15位で、昨年の欧州選手権でグループリーグを首位突破したオーストリア(23位)や、8強に進出したトルコ(26位)よりも上だ。