FIFAとCAS(スポーツ仲裁裁判所)は、ロコモティフ側の主張を支持。ディアラ氏は1,000万ユーロ(当時のレートで約12億円)もの罰金処分を受けた。さらにシャルルロワから興味を示されていたものの、ロコモティフおよびFIFAが移籍証明書の発行を拒否して移籍は叶わず、2015年にようやくオリンピック・マルセイユ入りするまで、約1年間にもわたる浪人生活を強いられた。

ディアラ氏はFIFAが定めた移籍ルールが、EU(欧州連合)法が定める「職業選択の自由」に反していると主張し、欧州司法裁判所(ECJ)に提訴。そして先頃、ECJはFIFAに損害賠償請求を求めたディアラ氏を支持する判決を下したのである。


FIFA 写真:Getty Images

移籍マーケットに大きな影響を及ぼす理由

FIFAのルールでは、フリーエージェントとなった選手と契約するクラブは、正当な理由がなく契約が解除されていた場合でも、前所属チームに移籍金を支払う責任を負うとされていた。

しかしECJは、ロコモティフおよびFIFAが国際移籍証明書の提出を拒否したことについて、ディアラ氏が貴重な選手生活を無為に過ごさざるを得なくなっただけではなく、「FIFAの規則が新たなクラブに移籍したいと望む選手の自由な移籍を妨げている」と断じた。

ディアラ氏自身は既に引退しているため、これによって損害賠償以上の大きな何かを得たワケではない。ところがECJのこの判断が、今後の欧州での移籍マーケットに大きな影響を及ぼすのではないかと言われている。

その理由として、前述したFIFAの「選手の地位と移籍に関する規則(RSTP)」や、CASの判断がEU法に反していたことが明らかにされただけでなく、移籍金の算出根拠にまで踏み込んでいる点が挙げられる。

10年にもわたる同裁判の中で、ベルギーの司法は国内法に基づき「移籍金=残りの年俸額」という見解を示しているのだ(契約残り期間の年俸額を超える金額を請求することは違反となる)。さらに、場合によっては、選手が一方的に契約破棄をしたとしても、移籍金ゼロで移籍することが可能になると指摘されている。